2009年4月10日金曜日

お連れ様はご存知のようで

 
私が以前マジックバーで出演していたときのことです。
 
 
マジックをやっていると、やはりお客さんの中には「あ~、わかった!」と突然声を上げる人がいらっしゃいます。
 
こちらのミスが無い限り、ほとんどの場合「分かったつもり」で見当違いな推測をされていることが多いのですが、あきらかに「お前絶対分かってないやろ・・・」というお客さんもいらっしゃいます。
 
 
 
今回はそんなお客様のお話。
 
 
 
 
私がマジックを演じているとき、オープニングからひとネタごとに「あ! 分かった!」と連呼する男性がいらっしゃいました。
 
 
どうやら彼女さんを連れているようで、その彼女さんらしき人は次々と見破る彼に「すご~い。 分かるの?!」と尊敬の眼差し。
 

 
 

余談ですが、私は多くの場合この種の人たちの発言には悪気は無いと思っています。
 
マジックの楽しみ方は多種多様です。 「分かった!」と言って自慢げにネタの推理を披露される方は、他のみんなもネタを知りたいと思っていると考えていて、場が盛り上がると思ってそのような行動に出られることも多々あるようです。

これに対応するには、観客に対して挑発的な仕草や発言を行わないことが第一でしょう。
明らかに他のお客様が迷惑そうにしているときは「あのね。 クイズじゃないんだから」とたしなめますが、基本的には「そうか~、もっと練習せなあかんな~」と言って流していました。 

ここで「その推理はハズレですね」と対決ムードになってしまうとそのお客さんはムキになり、他のお客さんが楽しめなくなってしまいますし、結局はタネを明かさない限り相手の推測が間違っていることを証明する手段が無いため、最終的に「分かった」と言った者勝ちになってしまうので、あまり真剣に相手をしないというのが本音のところです。
 
 
 
 
 
話戻って「何を見ても分かったという男性と、それを尊敬の眼差しで見る女性」カップルのお客様のおはなし。
 
 
最初の2ネタはスライハンド系なのでもしかしたら何かが見えたのかもと思っていましたが、その次のネタはミスディレクションを使ったもので、あきらかに彼の目は私の目的のところに向いており、角度的にも絶対に見えないところで必要な処理を行いました。
 
 
 
しかし、現象が起こった直後、再びその彼から私の不快指数が一気に跳ね上がる言い方で一言。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

「あ~、上手いけど分かってしまった
 
 
 
 
 
何や、その「申し訳ないけど」みたいな言い方。。。
 
 
 
 
しかし、そこからお連れの彼女さんのコメントが微妙に変化しました。
 
彼女も何かを察知したようです。
 
 
 
 
「え~、これも分かるの?!  どうやってるの?
 
 
 
 
あえて私は聞かないので、その質問を彼にしてくれたことに心の中で感謝しつつ、彼の答えを待ちました。 そして彼の答えは。。。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



「分かったけど俺にはできんから秘密にしとく!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
マジシャンの技量を褒めつつ自分の洞察力を誇示し、さらにはネタをばらされてはマジシャンが困るのでそれはしないという紳士であるかのような言い回し・・・

見事なスルーや。。。
 
 
 
  
 
 
 
その後持ち時間の10分弱の間、現象が起きるごとに「分かったけど俺にはできんな~。 さすが!」と合いの手を入れられながらのらりくらりと演技を続け、最後にその頃お気に入りだったフォーナイトメアーをばっちり決めてステージを降りました。
 
 
 
 
ステージの袖で「あ~疲れた・・・」と思っていたとき、客席の二人の声が聞こえました。
 
 
 
 
 
 
彼「最後のもすごいけど分かってしまったな~」






彼女「え~! あれもわかったん? どうなってんの??」






彼「いや~、分かったけど俺にはできんわ~」






 
 
 
 




彼女「もう、いいって
 
 
 
 
 
 
どうやら、お連れさんは彼が全然分かってないのが分かっていたようです。