2009年3月21日土曜日

過ぎたるは

 


私が学生時代、お客として百貨店のマジック売り場を卒業して初めてお世話になったマニア向け(?)ショップ「からくり堂」。




現在はショップとしての営業を終え、店主の真田豊実(さなだとよざね)氏がマジシャンを育成するためのスタジオとされている場所です。





氏にはマジックのテクニックや手順構成はもちろんのこと、その温和な言葉の端々から多くの大切なことを学ばせていただきました。






その真田氏が運営されていたマジックショップとしての「からくり堂」は、一般的な「マジックショップ」というものからは(失礼ながら)かけ離れた空間でした。










店主の人柄の良さから多くの海外マジシャンのアテンドをされており、世界の有名マジシャンが突然「ハ~イ」とやって来たり。


土曜の夕方に行くと、知らないお客さんがコンビニで買った蕎麦を食べてたり。。。


いろんな意味でショックを受けることが多いショップでした。







そんな「からくり堂」には多くの若手プロマジシャン志望の方が来店され、真田氏に練習したり考えたネタを披露し、良いところや悪いところを指摘してもらっている光景を良く見ました。





そんな中で、今でも覚えている一言があります。





それはあるカードマジック大好き青年が、張り切ってマジックを披露していた時のことです。





私も真田氏の傍らでその演技を見ていましたが、特に下手というわけでもなく、技法も違和感なくこなせているにもかかわらず、私の中で何かがひっかかりました。





それはひとつの動作や手順に対するものではなく、その彼のマジック全てを通して感じた違和感でした。





それが何か、いまいち分からないまま「ん~、悪く無いけど。。。」という感じで最後まで見ていた私の横で真田氏がひとこと。














「君の演技は目ぇつぶってても何やってるか分かんな~」









なるほど。




彼がしゃべり過ぎていたというのが私の感じた違和感だったようです。






彼のセリフはこんな感じでした。



「カードを一枚引いてください。 このカード忘れないで下さいね。 これを真ん中に入れてそろえてやります。 今カードは真ん中にありますよね? でも指を鳴らすと、一番上から出てくるんです。 もう一回中に入れますが、また指を鳴らすと上から出てくるんです。 でも、中に入れて二回指を鳴らすと下から出てくるんですね~。」









ん~~~。 たしかに目をつぶってても全部分かる。






というか、文章で全て伝わる。


マジシャンがラジオで演技をするのであればこれぐらいしゃべる必要はあるのかもしれませんが、実際の現象は目で見るものです。



たしかにある程度の説明は必要だと思いますが、過剰な説明はお客さんに想像させることを邪魔するのではないでしょうか。


また、無意識に説明が増えるのは本人の技法などへの不安の現われでもあると思います。


「お客さんに注視されて推測されると困るので、思考を自分の思う方にコントロールしたい」という思いが言葉に表れているように感じられるのです。







それ以来、私は動作の間を埋める程度のセリフだけで構成し、現象自体を説明しないようになりました。



最近の私のアンビシャスカードのセリフはというと、





「それじゃ何かひとつやりましょう。


 (カードを広げて差し出し「引いて」とアピール)





 これ、忘れないで下さいね。


 (と言いながらデックの中ほどに入れる)





 指を鳴らすと。。。 


 (指を鳴らして少し間を置き、トップカードを示す)」



といった流れです。










え? 少なすぎる?



今日からできる 上手な話し方